『漢字喜遊曲』という吉野弘さんの詩は母の字で始まる。<母は 舟の一族だろうか。こころもち傾いているのは どんな荷物を 積みすぎているせいか>
 積み荷の重さに耐えきれなかったのだろうか。難病の三男(1)を殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた富谷市の母親(42)の裁判員裁判が仙台地裁であり、懲役5年を求刑された。
 三男は生後間もなく遺伝子疾患の兆候が見られた。精神発達の遅れや視覚・聴覚障害が現れる難病で、根本的な治療法はまだないという。3歳までにほとんど亡くなると知り、「絶望」に陥った。
 母親は10年前にも同じ難病を患う次男を4歳で亡くしていた。三男は幸い一命を取り留めた。それでも母親は「助かったと聞いても喜べなかった」と語った。
 難病の長女(2)を抱える盛岡市の母親(42)は取材に、「娘と死のうと思ったことは何万回もある」と打ち明けた。どんな理由であれ、わが子をあやめようとしたのは言い訳できない罪だが、重荷でつぶれかけた「母」を支えられる社会でありたい。判決は31日に言い渡される。