夜のJR仙台駅前。交差点で信号待ちしていたら、ある支柱に張られたビラ1枚が目に留まった。A4判縦サイズ。左右の脇がパタパタと風に揺れていた。
 <犬を探しています ロングコートチワワ オス 6歳 3キロ 臆病 連絡先…>。写真に刷られた犬が、くりくりっとした目でこちらをじーっと見ている。たまたま巡り合わせた数人も凝視。10秒、20秒…。3人ほどは信号が変わってもまだ犬とにらめっこしていた。
 紙の威力と言っていい。流し読みしがちなネット全盛の時代だからだろうか、きれいな街中に突然現れたビラは新鮮だった。飼い主の喪失感に思いが深まり、あれこれ想像してしまった。捜索業者ジャパンロストペットレスキューは「印刷物が一番です。歩行者の視覚に訴えます」と効果を話してくれた。
 思えば昔は新聞の片隅に「尋ね人」という広告欄がよくあった。<○○ 帰ってこい 父>。何があったんだ? 二度も三度も読み返したことを覚えている。
 交差点を渡り終えても、あの犬の目がまぶたに焼き付いて離れなかった。