<蛍消え髪の匂いのなかに居る>。「風天(ふうてん)」という俳号を名乗った俳優の故渥美清さんが、65歳の時に詠んだ句だ。何とも艶っぽさが漂う作品だと思う。勝手に想像を膨らましてみる。
 2人でホタル見物に出掛けた夜。ホタルが1匹、2匹と消え、姿が見えなくなった。暗闇に嗅覚を研ぎ澄まされ、ほのかに髪が香る身近な女性に感じ入る。そんな情景か。全く別の解釈もある。
 母親とホタル狩りに行った時の思い出。ホタルに夢中になっていて、ふと嗅いだいつもの髪の匂いで、片時も離れず傍らにいてくれた母親の存在に気付かされたというものだ。だから俳句は面白い。
 極小の生き物が夜空に描く光のはかないアートは、誰をも「詩人」にしてくれる。今ではホタルを街中で見かける機会は少なくなった。それでも仙台では幸い地下鉄沿線で楽しむことができる。
 その名所は旭ケ丘駅近くの台原森林公園(青葉区)。見頃に合わせて恒例の「旭ケ丘ホタルまつり」が24日、開催される。カップル、家族連れ、友人同士、1人で。蛍火にどんな思いを重ねるのか。2017.6.16