テレビの時代劇で、酢で締めたアジに白い粒のようなものを混ぜ合わせた料理「うの花あえ」を見て、「うの花って何だっけ」と独りごちた。「おからでしょ」。あきれ顔で家人に返された。
 今でも、しっくりこない。おからでなければ、やっぱり「きしゃず」。
 おからと言うのは、豆腐を作る際に豆乳を搾った後に残る大豆の「殻」だから。殻が空(から)に通じることを嫌い、形状がウツギの花に似ているため「うの花」、料理をするのに切る必要がないから「きらず」とも呼んだ。きしゃずは、きらずが宮城や岩手で変化した方言だ。
 その言い換え同様、当てられた漢字にも妙味がある。「雪花菜」。これでおからとも、きらずとも読ませる。
 豆腐と油揚げ、納豆、みそ、しょうゆ。和食に欠かせないのは大豆から生まれた食品や調味料。その残りかすであるにもかかわらず、風流な名を付け、ほかの食材とともに調理し残らず頂いた。大豆に向けられた先人たちの思いがにじむ。
 そうした食に対する感謝の念も、方言も、ともに失いたくはない。