「ハーモニカは楽器のホームラン王」と、生前語っていたのは俳優の小沢昭一さん。トランペット、クラリネット、トロンボーン…。みんな吹いた時にだけしか音が出ないけど、「わがハーモニカは吹いても吸っても音が出ます」。
 ハーモニカの名手だった小沢さんらしい言葉だが、シンプルな仕組みだけに表現力が問われる。中でも世界で最もポピュラーな「テンホールズ(10穴)」はテクニック次第で多彩な音色を紡げる。
 テンホールズのプロの演奏家が仙台市にいる。吉田有信さん(63)だ。1993年、本場ドイツで開催された第4回ハーモニカ世界選手権のフォーク&カントリー部門で優勝した実力者。仙台、東京で後輩を指導する傍ら、CDを出し国内、アジアなどで演奏会を開催してきた。
 ここに来て挑戦者魂がもたげてきた。「今の実力を試したい」。今度は世界選手権(11月、ドイツ)のジャズメロディック部門に出場することを決意した。費用は妻からの誕生日プレゼント。遠く日本で夢を支える愛妻の思いを乗せて奏でるブルースは、審査員の心にどう響くか。