「はい、これで免許取り消しです」。冷淡な「取り消し」という役所言葉が涙ながらの別れに水を差した-。運転免許証を自主返納した東松島市の高齢女性が、運転免許センターでのやりとりを本紙朝刊の「声の交差点」で嘆いていた。
 84歳までハンドルを握っていたのは夫を病院に送迎するため。愛する夫が4月に亡くなり、40年近い運転歴に終止符を打つ決心をしたのだという。
 「年齢という悲しい現実を前に勇気を振り絞って返納した。せめて『ご苦労さま』の一言があったら」と女性は願う。
 警察白書によると、昨年の交通事故死者数は67年ぶりに4000人を下回った。一方、死亡事故に占める高齢運転者の比率は高まり、「対策は喫緊の課題」と指摘する。対策の柱として、白書は認知症対策を強化した3月の改正道交法の施行に加え、免許自主返納の促進などの取り組みを掲げている。
 交通安全の旗振り役は、現場の警察官にとどまらない。運転免許センターでの心温まる対応が自主返納を促し、大切な命を守ることにつながるはずだ。