アリの穴から堤も崩れる、という。地域社会もささいな交わりの場を失えば、人と人との結び付きはどんどん弱まる。
 住まう街の話である。町内会の班で毎年、十五夜の前後に月見会を開いていた。夕方に20世帯ほどの家族が、あるお宅の庭先に集まり2、3時間懇談する。会費は1人600円。当番の主婦たちがイモ煮と弁当を用意する。参加者は飲み物と汁わん、箸を各自持ち寄る。
 「お孫さんは何年生になった?」「ご主人、定年まであと何年?」。隣人同士、老若男女が近況を確かめ合ってきた。
 だが、今回は取りやめる。「出席がおっくうになってきた」との声が多数を占めた。班の家々が並ぶ区画は1970年代に地元の土地所有者より売りに出され、当時、小中学生を子に持つ夫婦が多くを購入。時の流れに伴い世帯は代替わりし新住民も増えた。行事の中止は来るべくして来た「終着点」だったのか。
 今年の十五夜は10月4日。催しはなくなり隣人の笑顔が遠くなっていく。お月様だけがやけに明るい夜になりそう。<月祀(まつ)る家の冷たき畳かな 渡辺純枝>