知人のカラオケのおはこで、すっかり覚えてしまった。俳優鶴田浩二の『街のサンドイッチマン』。ロイド眼鏡に燕尾服(えんびふく) 泣いたら燕(つばめ)が笑うだろ…俺(おい)らは街のお道化者(どけもの) 呆(とぼ)け笑顔で今日もゆく。
 フランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871~1958年)の絵画を見る度、この歌が耳の奥でバックグラウンドミュージックのように繰り返される。サーカス芸人、見せ物小屋の呼び込み、娼婦…。社会の底辺にある貧しい人々を時にモチーフにして、生きることの悲哀、苦悩や救いといった人間の内面を描いた。
 仙台市青葉区の宮城県美術館で開催中のルオー展(10月9日まで)でも、こうした作品が展示されている。『老いたる道化師』もその一つ。異様に輝く目と裏腹に衰えを隠せない体つき。老骨にむち打って働かざるを得ない現実を映す。
 晩年、ルオーに心酔した評論家小林秀雄にこんな言葉がある。「悲しみに対し、これをととのえようと、肉体が涙を求めるように、悲しみに対して、精神はその意識を、その言葉を求める」。ルオーは悲しみを芸術に昇華させた。