松尾芭蕉のこんな句がある。<香ににほへうにほる岡の梅のはな>。「うに」とは泥炭のことだ。その悪臭を、そばに咲く梅の芳香が和らげてほしいと詠む。
 泥炭は石炭生成の初期段階。このころ既に燃料として使われていた。石炭も「燃石」という名で古い文献に出ている。
 製鉄や輸送、化学素材など幅広い産業の資源となり、近代社会を支えた石炭。隆盛期は20世紀半ばで終わるが、発電用の需要の火は燃え尽きていなかった。
 関西電力系の石炭火力発電所「仙台パワーステーション(PS)」が、10月に仙台港で営業運転を始める見通しだ。住民らから、仙台進出への疑問や環境への影響を心配する声が上がっている。
 仙台PSは「環境保全に万全を期す」「地元産業の活性化に寄与したい」などと理解を求める。この地が津波被災地だという意識を常に持ち、住民の不安に寄り添う誠実な努力を続けてほしい。
 きょうは「石炭の日(クリーン・コール・デー)」だとか。大気や海を汚さず悪臭もない安全な事業を。汚染物質は花の香では覆い隠しきれないのだから。