北朝鮮の弾道ミサイル発射を知らせるサイレンは、日本が戦後積み重ねてきた平穏を引き裂くようだ。
 「国際的緊張が高まる情勢は86年前と似ている」。「満州事変」に端を発した十五年戦争とほぼ同じ時期を満州(現中国東北部)で過ごした元東北大教授の安孫子麟さん(89)が指摘する。
 1931年9月18日、関東軍が南満州鉄道を爆破し、満州事変は始まった。初の戦死者は宮城県の兵士とされるなど、満州と宮城との因縁は深い。南郷村(現美里町)や鹿島台村(現大崎市)、耕野村(現丸森町)からは、大勢の開拓団が国策で送り込まれた。移民の数は長野、山形両県に次ぐ。
 終戦間際、満州にソ連軍が侵攻すると関東軍は開拓民を置き去りにして敗走。南郷の開拓団は逃避行の末、集団自決に追い込まれた。「軍は国民を守らない。沖縄でも、サイパンでもそうだった」
 満州で惨禍を目の当たりにした安孫子さん。自身の経験を通して戦争の実像を伝えようと講演を続ける。悪夢が現実味を帯び、平和への願いが強まる。