「野球うまくなったら買ってやる」。幼少のころ、父に言われた。革の本物のグラブをねだったがかなわず、おもちゃのグラブで野球ごっこに興じた。いつかは欲しい。釜石市も同じ思いだったか。
 釜石市が渇望したのはガントリークレーン。岩手県が釜石港に設置し、先月末に稼働した。コンテナの積み降ろし能力は、既存のジブクレーンの3倍。物流拠点には欠かせない「道具」なのだ。
 東日本大震災で被災した釜石港の復旧は、発生3カ月後と早かった。4カ月後には国際コンテナ輸送を中継する定期航路を開設。2015年にはコンテナ取扱量が震災前の約40倍と飛躍的に伸びた。
 ガントリークレーンは、大阪府が使っていない1基を復興支援として無償譲渡した。新品なら1基10億円。財政難の岩手県には渡りに船だ。もちろん、セールスや奨励金創設など釜石市の不断の努力があってこそのご褒美と言えよう。
 釜石港を数十倍上回る取扱量を誇る仙台港には既に4基ある。コツコツと働くアリが巨大ゾウを脅かす? 東北の物流が活性化すれば産業も勢いづく。