「奇想の画家」として有名な伊藤若冲は、絵にしか興味を持たない「おたく絵師」と思われがちだった。しかし、最近の研究では京都の青物問屋に生まれた若冲が、奉行所が営業停止を命じた青物市場の危機に、先頭に立って役人と交渉していたことが分かっている。
 粘り強い説得の大切さを知っている若冲らしい水墨画が残る。『蝦蟇河豚(がまふぐ)相撲図』。行司役がいないまま、ガマガエルとフグという毒を持つ者同士が、相撲を取る姿をユーモラスに描いている。
 この絵を見る度に思い出すのは、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の2人。核兵器という「猛毒」もさることながら、毒舌という点でも一歩も引かない。「ちびのロケットマン」(トランプ氏)「火遊びが好きなならず者」(金氏)と互いに口汚くののしり合う。
 トランプ氏の11月5日からの訪日でも、過激な発言が飛び交いかねない。相撲図には「力自慢が終われば天下は平穏なのに」という趣旨の詩句が添えられている。ご両人に味わってもらいたいが、絵画鑑賞の趣味がなさそうで残念だ。