<鮭(さけ)の子の強き一念たたえつつ…>。母校の中学校の校歌にこんな一節があった。川のせきで躍る群れが目に浮かぶ。サケ漁が盛んだった郷里は震災後、ふ化場が新設され、再生に歩みだしている。
 先月、台風21号が去った翌日、仙台市泉区の七北田川の支流、高柳川を遡上(そじょう)するサケを見た。細い流れの小さな川である。七北田川ではかつて市民団体が稚魚の放流をしていた。県によると数年前に活動を停止し捕獲数はゼロになったが、遡上が絶えたわけではないという。
 大雨で増水した七北田川を上る途中、支流に迷い込んだのだろう。河口から15キロ超。2匹が浅瀬で体をばたつかせて上流を目指す。近所の散歩の人たちも珍しそうに土手の上からのぞき込んでいた。
 サケは森を豊かにするという。稚魚が大きく成長し、大量の栄養価を古里の山河にもたらすからだ。母川回帰の本能はどこか人の人生にも似て親しみが湧く。
 10日ほどして見に行くと、ボロボロの体でまだ泳いでいた。産卵場所が見つからないのか。燃え尽きる寸前の命であろう。驚くようなサケの一念である。