胸に突き刺さったナイフを放っておくとどうなるか。傷口が膿み、ばい菌が全身に回り重篤な症状に至る-。
 心の傷も同じことで、最も注意しなければならないのが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)だという。
 震災や津波、災害、紛争など強いトラウマ(心的外傷)を受けると、記憶は一部が抜け落ち、時系列が入れ替わる。津波が襲ってくる映像をはっきり覚えているにもかかわらず、恐怖や不安を感じないこともあるとか。
 心療内科医の桑山紀彦さんは名取市を拠点にして、劇などを通じて東日本大震災で被災した子供たちの心のケアに当たってきた。桑山さんによると、PTSDのメカニズムは、「記憶の倒錯、抜け落ち」「記憶と感情の乖離(かいり)」の二つの現象に集約されるという。
 「PTSDを避けるには思いを吐き出させて、時系列の記憶の中で抜け落ちた部分を補い、記憶と感情を結び付ける作業が必要になる」と桑山さん。震災から6年8カ月たつ今も、語れないままでいる被災者の多さを思う。