1970年代の流行歌が年の瀬恒例の歌番組で流れる。懐かしいメロディーに心がじんわり温まる。
 「一つの時代を思い出す最初の扉が歌であればいい」。歌謡界の黄金期を築いた作詞家阿久悠さんは言った。『勝手にしやがれ』『舟唄』『もしもピアノが弾けたなら』『時代おくれ』。手掛けた詞は生涯5000曲以上。幅広いジャンルでヒット曲を量産した。
 歌は時代とのキャッチボール-。阿久さんは15カ条の「作詞家憲法」を定め、詞に時代の匂いをまぶした。登場人物は「女」から「女性」へ。映像的な技法を駆使し、社会へのメッセージを添えて約4分間の世界を創り上げた。
 没後10年の今年、再び阿久作品が注目を集める。若い人気歌手らがカバーしたアルバムがリリースされ、未発表作に曲が付いた。強く鮮烈な言葉を乗せて昭和の空気を震わせた歌は、イヤホンで曲を聴く世代も魅了する。
 来る年は昭和が終わって30年の節目になる。行く年は阿久さんの歌で送ろう。半端なワインより酔わせてくれる。