仕事納めを迎えて、大方の人は忘年の杯をひとまず伏せたのではないか。とはいえ、家庭で親戚やいとこ同士による酒席もあろう。そんなとき飛び出す声が「よし、歌うべ。カラオケだ」。
 マイクを握って声を張り上げる。座持ちにはとてもいい。年末年始、一度や二度は連れ立って店に行くのではないか。
 歌手の三波春夫さんは生前、こんなことを言っている。「ギター一本でも、下手なピアノでもいい、ナマの楽器で歌ってこそ(味は)出るものだと思います。楽器がなければ手拍子でもいい。これこそ歌の原点だと思いますよ」(斎藤茂氏著『この人この歌』)。浪曲出身者としての自負がのぞく語りである。
 仙台市内の路地を歩き、夜に明かりがともる家々から生の歌声が響いてくることはほとんどなくなった。やはりカラオケが普及した1980年代ごろから年越しの風景が徐々に変わったかに見える。
 どれ今夜は家で三波さんの歌でも一つ。…小皿叩(たた)いてチャンチキおけさ…。茶わんや徳利(とくり)が飛んでこないよう、控えめな声で。皆さん、良いお年を。