「内風呂をたく」とはよく言ったものだ。底冷えする夜の仕事帰り。縄のれんをくぐり、日本酒の熱燗(かん)をちびりちびりやると、生き返った心地がする。
 いつごろから、日本人は燗酒を飲むようになったのか。平安時代には既に小鍋に酒を入れて、じか火で温めて飲んでいたという。『江戸の居酒屋』(伊藤善資編著)によると、江戸っ子たちは年中、燗をつけて飲んでいた。
 冷やすという習慣はなく、飲んでも常温。これを「冷や」と称していた。冷やは体に障るということで、加熱していたらしい。温度にうるさい客のため、専門の燗番を置いた居酒屋もあったとか。
 燗酒の名称も知った。30度の「日向(ひなた)燗」から5度刻みで「人肌燗」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「飛び切り燗」と呼ばれる。飲んべえならば、温め方の加減で酒の味が変わることが分かるはず。しかも、とっくりや杯の形やサイズ、素材でも微妙に変化するから不思議だ。
 こよいはお気に入りのマイちょこで、ぬる燗をぐいっと。<萩焼のぐい呑(の)み軽し燗の酒 谷合青洋>