「残業」という言葉を職場に置いてある辞書で引いたら「居残って仕事をすること」とあった。一方、自宅でずっと愛用している辞書には、次のような語義が載っている。「仕事を残すこと」
 「業ヲ残ス」と読めば、確かに愛用の辞書は正解かもしれない。そう固く信じて、小欄の筆者などは会社生活を送ってきた。辞書の名は『迷解 笑辞苑』。大して売れなかったらしく、絶版になったままなのが残念。
 著者は、筑波大で長らく英語の教授を務めた人だから、まあ、完全にでたらめな解釈でもあるまい。とするならば「さあ、きょうも残業して定時に帰ろう」という使い方もできそう。
 きょうは二十四節気の「清明」。万物が清らかで生き生きとする時節。昼休み、街に出ると、新入社員だろう、清明そのもののように歩いていた。
 生気にあふれ、緊張した様子で、ちょっと悲壮感も。過労死の心配をするわけではないけれど、こんな助言はどうだろう。普通の辞書の「残業」ではなく、わが愛用の辞書の「残業」を頭の隅に。