宮城県警の交通部長を務めた方から一つの見方を教わった。「運転免許の自主返納制度は、戦後の日本を築いてくださった人を守るための仕組み」。身体機能や判断力が衰えたお年寄りから免許を取り上げるのではなく、交通事故で苦しみを背負わせないための制度に位置付けたいという発想だ。
 この記憶をよみがえらせたのは、仙台市太白区のスーパーで、屋外売り場に乗用車が突っ込み、1人が軽いけがをした5日の人身事故だった。運転していた無職の男性(80)がアクセルとブレーキを踏み間違えたのが原因らしい。
 交通弱者といわれる高齢者も、ハンドルを握れば加害者になり得る。事故の当事者として取り調べを受け、被害者の損害を賠償し、場合によっては裁判になることも。先達をそんな状況に追い込みたくない、という考えに共感した。
 県内の高齢運転者による死亡事故は昨年、自損を含め全体の3分の1を占めた。本当に痛ましい。春の交通安全運動が先週、始まった。この機会に返納制度について、少し考えてみてはどうだろう。