有名なベートーベンの第9交響曲。今年は日本で初演されてから100年になる。場所は徳島県鳴門市にあった板東俘虜(ふりょ)収容所。第1次世界大戦で捕虜になったドイツ兵たちの手づくり公演だった。
 記念の絵本『「第九」 歓(よろこ)びよ未来へ!』(PHP研究所)がこのほど出版され、仙台市の水彩画家古山拓さん(55)が絵筆を振るった。収容所長は会津出身の松江豊寿大佐。その縁で「ぜひ東北の画家に描いてほしい」と依頼された。
 松江は戊辰(ぼしん)戦争での古里の悲劇から、捕虜を「国のために戦った勇士」と遇し、音楽など多彩な活動を認めた。その感謝が第9交響曲の演奏になったという。
 「ドイツ兵たちの個性的な顔づくりに苦心しました」。現地取材で収容所の生活をよみがえらせ、陶器やパンの製法、西洋野菜の育て方など、近隣の住民が捕虜と交流して教わった様子も描いた。
 人間らしく生きる自由と希望、そして平和を歌い上げた捕虜たちの演奏から100年。「今の世界は平和だろうか。国境や対立を超える交流はあるだろうか。それを、子どもたちに考えてほしい」