「ラーメンなかじま」が一日だけ復活した。宮城県七ケ浜町の代ケ崎浜地区避難所で12日、中島幸子さん(83)がラーメンを振る舞った。柔らかい焼き豚、さっぱりとしたスープが特徴のしょうゆ味。100食分の麺は全部自分でゆでた▼店は1980年、町内にある東北電力仙台火力発電所の正門前に開業。中島さんがラーメンを調理、夫が配達した。二人三脚で歩んだ夫が亡くなった翌年、東日本大震災が起きる。店は津波で流され、鍋一つ残らなかった▼仮設住宅を経て、今は災害公営住宅に住む。「もう一度、ラーメンを食べたい」と知り合いに熱望されたが、高齢もあって尻込みした。復興支援に携わるNPO法人に一日限定の復活を提案され「ちょっとだけやるかな」と心が動いた▼「いつも大盛りを注文しました」。地元の住民や外に移り住んだ元住民が一緒に麺をすすりつつ、語り合った。津波で妻を失った男性は「七回忌の法要をしました」と近況を話した。家族の思い出、街の記憶が詰まった一杯のラーメンだった▼「さっちゃんの味だった。ごちそうさま」と胃袋も心も満たされた人たちを見送った中島さん。最後に作った一杯を食べ始めたが、すぐに箸を置いてしまった。「もう胸がいっぱい」。手伝いの女性たちと笑い合った。(2017.2.20)