俳優の渥美清さんは、映画『男はつらいよ』がシリーズ化された当初、作品が公開されると東京都内の映画館に通った。都心と下町では、同じ場面でも笑いの大きさが違う。観客の反応を参考に、誰からも愛される「寅さん」をつくり上げた▼渥美さんが映画館の暗闇に身を潜めていた当時と今では、映画を巡る環境は大きく変わった。最たるものがデジタル化だ。2013年に国内のメーカーが映画フィルムの生産を中止し、新作はデジタルデータで配給されるようになった▼映画館もデジタル化に対応する中、他館との差別化を図るため、あえて35ミリフィルムの旧作のみを上映している名画座がある。JR秋田駅前の商業ビルにあるシネマパレ。1985年に封切館としてオープンし、近年は週末限定で営業していたが、26日に閉館する▼ビルが改装工事に入ることに加え、観客数の伸び悩みもあり、潮時と判断した。「でも、やりたいことはやったし、映画館で映画を見る楽しさも伝えられた。幸せです」。支配人の川口豊さん(39)は淡々と話す▼きょうから4日間、最後を飾るのは、『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』と『太陽を盗んだ男』。くしくも、『男はつらいよ』の山田洋次監督は、35ミリフィルムで映画を撮ることを今も大切にしている。(2017.2.23)