仕事に時間の規律が持ち込まれたのは明治以降だ。それまでは日の出、日の入りを目安にする不定時法。鐘の音を頼りにお天道様と一緒に働き、人々はゆったりとした時間を生きていた▼鉄道運行や工場の定時操業など、社会は徐々に時間にとらわれていく。遅刻や早退などは厳に戒められ、代わりに残業が常態化したという。(『遅刻の誕生』三元社)。明治半ばの所定労働時間は9~10時間。長時間労働が普通だった▼職種による格差も当然。低賃金の労務者ほど残業に頼る一方、一部の官僚などは午後3時までの6時間勤務だった記録も残る。明治のころ、仕事の時間への感度が高かったら、その後の日本人の労働観も少しは変わっていたのでは▼味の素が、2018年度から労働時間を7時間に減らし、子育てなどを支援するという。収入減に配慮し一律月1万円の賃上げも行う。財源は浮いた残業代。明治期創業の同社は労使協調で独自の社風を築いてきた。1世紀かけ「時間の鎖」を解いた▼月末の金曜の仕事を早く終えるプレミアムフライデーがきょう始まる。主眼は消費拡大。働く意識の改革にどうつなげるか。「時は金なり」なら心に響かない。和食の味を引き立てるような、気配りあるさじ加減が大切。浸透に時間はかかりそうだ。
(2017.2.24)