イタリア北東部のラベンナは、世界から観光客を集める街だ。5~6世紀に建てられたキリスト教の聖堂や礼拝堂が世界遺産になっている。とりわけ人気なのが、建物内部に残るモザイク画。ガラス片を使っているので星のような輝きを見せる▼サン・ビターレ聖堂のものが有名だ。別の聖堂ではかつて、ミサに集まった人たちの気が散るとして、わざとすすけさせようとしたこともあったらしい。こうした宝を直しながら後世に伝えてきた▼東日本大震災の被災地で、震災遺構・遺産の保存活用を巡りさまざまな動きが出ている。気仙沼市は、気仙沼向洋高の壊れた旧校舎に見学者を入れるため、独自の条例案を審議中。福島県富岡町は、津波や原発事故を示す物や書類などを保全する条例を、全国で初めて成立させた▼教訓の発信や風化防止-。保存は私たちの子や孫、未来の地域を守るための行為だ。続けるには金も人も要る。心配の声は尽きないが今は一歩目。歩み始めれば知恵も出るし、応援団も現れるだろう▼イタリアはラベンナに国立モザイク学校をつくり修復士を育てている。「トレビの泉」修復は高級ファッションブランドの提供資金で行われた。日本にも「観光防災学」なんて研究が生まれるかもしれない。いや、生まれてほしい。(2017.3.9)