東北の地に根ざした雪研究家、故高橋喜平さんがその道に入ったのは、子どものころ、友達が雪崩に遭い亡くなったのがきっかけだった。「何とか雪崩の予知ができないかと、随分現場を見て歩いた」▼そのたび「恐ろしさで身のすくむ思い」とも回想している。そんな経験を積み重ね発生の仕組みを見つけ、雪崩防止林の工法も考案した。しかし、雪崩による災害は容易になくならない。予測のつかぬ自然の営みには太刀打ちできない▼里には桜の便りも届いているこの時季、まだ冬との境目にあった栃木県那須町のスキー場できのう、恐れていた雪崩事故が起きた。県高校体育連盟の登山講習会に参加していた地元の高校生らが巻き込まれ、多くの犠牲者が出ている▼現場付近は、27日未明からドカ雪が降り続け、気象庁は雪崩注意報を出して注意を呼び掛けていた。春先は、固まった積雪の上に新たに降った雪が滑り落ちる「表層雪崩」を起こしやすいという。実地の訓練に向け、気象状況の把握や安全対策は十分だったろうか▼山歩きへの親しみは、若い世代にも広がっている。春休み中の登山体験に生徒らは心浮き立っていたに違いない。高橋さんの遠い日の悔しさをまた繰り返し、やりきれない。雪崩への警戒。東北でもしっかり続けたい。(2017.3.28)