東北楽天が仙台市を本拠地にする以前、県営宮城球場(現Koboパーク宮城)は静かなフィールドだった。観客も応援団も少なく、いろいろな音が聞こえた。投球を受けたミットは金属的な余韻を残し、選手の太い声はスタンドで跳ね返った▼耳は、過去を覚えているものだ。プロ野球の2017年シーズンが、きょう開幕する。則本昂大投手の速球のうなりが、銀次選手のバットの快音が、帰ってくる。勝利の空に吸い込まれる「バーン!」の歓声も▼福島県の浜通りにも懐かしい音が復活する。あす、JR常磐線の浪江(浪江町)-小高(南相馬市)間の運行が再開する。列車のモーター、発車メロディー、請戸川の鉄橋の響き-。6年前は当たり前にあった▼避難指示の解ける浪江や富岡など4町村に生活が戻ってくる。美術家篠田桃紅さんが、こんなことを書いている。<隣の部屋の母が立てるもの音を、「いいな」、と思ったものだ。何気(なにげ)ない片付けものの音、着物を着かえているらしい音、よみ物の頁(ぺーじ)をめくる音、今も私の耳の底に残っている>▼夕げの支度、風呂場の鼻歌、近所とのおしゃべり-。聞き流していたものの中に、一人一人の営みがあった。それが街の音だった。人の息がこもった暮らしの音たち。いつか、祭りばやしも。(2017.3.31)