福島市松川町の「あぶくま茶屋」が3月末で、店を閉じた。東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた阿武隈地域の女性農業者らでつくるNPO「かーちゃんの力・プロジェクト」の拠点だった。福島県飯舘村など古里の避難指示解除が進み、区切りをつけた▼家も田畑も失った「かーちゃん」たちの活動は、2011年の秋に始まった。仮設住宅に手作り弁当を届け、漬物や菓子など郷土食を全国に販売。被災地ツアーを受け入れ、語り部役を買って出た▼中心を担った飯舘村の渡辺とみ子さん(63)は「農家のかーちゃんたちが受け継いできた味や知恵を途絶えさせたくない。つらいこともあったけど、その思いだけはぶれませんでした」と振り返る。自身も村特産のカボチャ「いいたて雪っ娘(こ)」の種を絶やさぬよう、福島市で農地を開墾し、栽培を続けた▼原発事故から7度目の春。メンバーはそれぞれの道を歩み始める。飯舘村に戻った細杉今朝代さん(61)は「村に憩いの場をつくりたい」と自宅でサロンを開く夢を抱く。渡辺さんは当面、福島市に残り、村でカボチャの実証栽培に取り組む▼避難指示が解かれても生活環境はすぐには元に戻らず、地域再生は緒に就いたばかり。かーちゃんたちのぶれない信念が、いばらの道を切り開く。(2017.4.3)