時代劇のドラマを見ていると、忍者屋敷の扉がくるりと回るシーンがある。「しまった。逃げられた」。向こうは暗闇の抜け道。追っ手がじだんだを踏んでいる▼もともとこうした舞台装置は江戸歌舞伎が得意とした。大道具を90度後ろに倒し、底の面を立てて瞬時に全く別の状況に変える。そのとき「ドンドン、デンデン」という鳴り物が響き、いつしか「どんでん返し」と言われるようになったとの説がある▼この人のどんでん返しは拍手喝采だった。フィギュアスケートの羽生結弦選手(22)=ANA、宮城・東北高出=が、世界選手権でショートプログラム5位からフリーで世界最高の得点を更新する演技で大逆転。3季ぶりの優勝に「自分の記録にずっととらわれていたので、やっと一歩踏み出せた」と喜びを口にした▼新年度がスタートしたばかり。新入社員のなかには早くも仕事で失敗し落ち込んでいる人もいるだろう。そんなあなたに羽生選手の言葉を贈る。「(自分は)ノーミスを多発する選手ではない。弱いと思う部分がある。確信的なものをつかみたい」▼誰もが過ちを犯し一度は沈む。そこで肝心なのは、間違いの原因追究をしてジャンプすることだと羽生選手が説く。何かと失点が多い人もあろう。地道な一発逆転の夢を捨てない。(2017.4.4)