山岳部にいた高校時代、毎年5月の連休に蔵王で雪上訓練をした。硬い残雪で安全な歩き方、滑落の防ぎ方を習い、初夏の山の爽快さを味わいながら県大会に備えた。冬の登山は顧問から禁じられ、未熟な高校生には当然と考えていた▼栃木県のスキー場で3月末、登山講習中の同県大田原高山岳部の男子生徒7人、教諭1人が死亡した遭難事故。同高は7日、入学式を迎え、悲しみの春となった。半世紀以上続く伝統の合同講習というが、犠牲者は1、2年生。企画した大人の最優先の務めは無事に帰すことではなかったか▼雪が降り続く悪天、「典型的な雪崩の発生条件」という専門家の指摘、遭難時の場所を伝える発信器の不備、講習責任者が現場に不在で連絡も取れていなかった事実など、当時の状況が分かってきた▼救助された生徒が「こんなに降っているのにやるんだ」と驚いた、と事故後のニュースで語っていた。その不安こそ、命が発する「安全」のセンサーなのだと思う。逆のことが高校時代の夏合宿であった▼秋田・岩手県境の乳頭山に登ろうとしたが、運悪く雨続き。雲行きを眺めて3日待った。登りたかったが、2人の顧問は仙人のように座し、「自然が相手では仕方がないね」と淡々と中止を決めた。大人の山男の判断だった。(2017.4.9)