如意棒(にょいぼう)は西遊記の主人公孫悟空が使った武器だ。そもそも、用途は別だったらしい。「その昔、夏(か)の大禹(たいう)が黄河治水のときに水深を測るのに使ったもの、つまり太古の測深儀である」(尾崎幸男『地図のファンタジア』)▼伸ばせば天地を貫き、縮めれば耳の中に隠せる。伸縮自在の棒は確かに、深さを測るのに便利だったろう。現代は如意棒の代わりに「マルチビーム」と呼ぶ音波を使う。海底で反射した音波を受信し、解析することで、深さや地形を把握する▼東日本大震災の被災3県で、第2管区海上保安本部(塩釜市)が、進めてきた海図の改訂が2月に完了した。対象は主要21港湾が描かれた18海図。水深や底質、魚礁や水面に露出しない岩、灯台などを記号で表す海図は、安全に航行するための船の必需品だ▼津波被害が大きい港湾の海図を見ると「#」の記号が無数に点在する。津波で流失した倒壊家屋、漁網、車、船など海底に散乱したがれきを示す。沿岸部の市街地を破壊した津波は、海底の様相も一変させた▼ちなみに、日本初の海図は1872(明治5)年刊行の釜石港。大震災の後、2011年10月に改訂され、湾口防波堤の建設に伴って15年10月にも直された。港の姿は刻一刻と変わる。海図は被災地の「復興図」でもある。(2017.4.11)