首に重荷を掛けられた人が手を広げてすっくと立っているように見える。「央」という漢字。国語辞典を引くと、何とも含みが多い。真ん中はもちろん、「尽きる」とか「やむ」「終わる」の意味を持つ▼それだけではない。『大字源』によれば、字形の首かせは外すに外せないことから「久しい」「遠い」「願い求める」の意も。広場の中心に躍り出た人の歩んだ山坂と費やした歳月が思い浮かぶ▼フィギュアスケート女子の2010年バンクーバー冬季五輪銀メダリスト、浅田真央選手(26)=中京大=が自身のブログで電撃引退を発表した。6位だった14年ソチ五輪のシーズン後に休養。1年後の昨季復帰したものの、往年の輝きを取り戻せず18年平昌五輪への出場はかなわなかった▼この人にとって首かせはきっと、届かぬ金メダルだったかもしれない。国民も期待という重圧をかけてしまわなかったか。とはいえ、浅田選手は東日本大震災後たびたび被災地を訪れ、「逆に元気をもらえた」と新たな刺激によって復活を目指していたのだが…▼長きにわたり世界を相手に戦い続け、日本中に何度も紙吹雪を舞わせた「銀盤のヒロイン」。東北は今、桜前線が北上している。昨日の雨のせいだけではあるまい。花が散り、つぼみも身を固くしている。(2017.4.12)