「200戸余りが入ったけれど、出歩く人を見ないね」。東日本大震災の被災地気仙沼市鹿折に昨年末、酒店を再建した菅原文子さん(67)は言う。近所に4~5階の災害公営住宅が8棟建った。高齢者が多いという隣人たちの暮らしを心配する▼宮城県内では計画された災害公営住宅が本年度中にほぼ完成し、仮設住宅にいた被災者の住み替えが進む。が、入居は抽選方式が多く、見ず知らずの人同士が集まり、自治会の発足に時間がかかる。マンション型だとなお顔を合わせる機会が乏しい▼地域の高齢化も急速で、生死に関わる問題は見えにくくなる。同県内で誰にもみとられずに孤独死した人が昨年は903人と過去最多になり、約6割が高齢者。大震災を挟み、この10年で1.5倍に増えた▼災害公営住宅の完成がゴールではない。「仮設住宅以上に閉じこもりが増え、心の病気や認知の低下など健康の問題が生じやすい」という石巻市包括ケアセンター関係者の話を11日の本紙は伝えた。心のケアや絆づくりを支援する自治体の人手も足りない▼鹿折の菅原さんは酒店に小ホールを設け、お酒を楽しむ会やミニ演奏会、落語会などを始めた。「公営住宅に入った知人に、入居者を誘ってとお願いしている」。新旧住民の交流を各地に育てたい。(2017.4.13)