阿蘇山の一部が長さ約700メートル、幅約200メートルにわたり崩落した現場は1年前のニュースのままに、赤い傷口のような地肌をさらしていた。先ごろ訪ねた熊本県南阿蘇村。昨年4月14、16日に起きた熊本地震で、関連死を含めて27人が亡くなった▼村内を第三セクターの南阿蘇鉄道が走る。岩手県の三陸鉄道を思わせる1両編成の電車が10の駅(約18キロ区間)を結んだが、地震後に再開できたのは5駅分。残る復旧費が概算で50億円に上り、確保のめどがまだ立たない▼電車がやって来ない、六つ目の駅が長陽(ちょうよう)。無人駅に「久永屋」というカフェがある。客はベンチから阿蘇の外輪山を眺め、お茶と手作りケーキを楽しむ。主人の久永操(そう)さん(36)=佐賀市出身=は駅舎管理人を兼ね、昨年が開店10周年だった▼地震で自宅を被災しながら翌月「皆が心を癒やせる場に」と店を再開した。その後、村への観光客は半減したというが、人の集う催しを長陽駅で企画し、交流サイトを通じて村や南阿蘇鉄道への応援を呼び掛けてきた▼東日本大震災を経験し、東北から熊本の被災地にボランティアに通う人が常連になり、励まされるという。東北とつながる夢も浮かぶ。「三陸鉄道が走る街をモデルにした『あまちゃん』のようなドラマを南阿蘇村で作れたら」(2017.4.15)