旧古川市など1市6町の合併で誕生した大崎市は昨年、新市発足10周年を記念して市の木、花、鳥を制定した。花はヒマワリ、鳥はマガンを選んだ。木は桜。桜が市の木となった背景には物語がある▼1999年のある夜、古川市(当時)の酒場で数人の中年男性が話し込んでいた。「古川にはこれといった観光地がないよね」「ならば…」。市民が憩う化女沼の岸辺を日本一の桜の園に、と風呂敷を広げた▼宮城県と市から許可を取り付け、2000年4月2日、強風を突いて植樹式を挙行した。約500人の市民が呼び掛けに応じて集まり、1600本の苗を手植えした。「行政でも企業でもなく、市民が自らなし遂げた事業です」と、「化女沼2000本桜の会」の佐々木哲朗会長(65)は胸を張る▼東日本大震災で大崎市も大打撃を受け、「桜の会」の仲間だった男性1人を含む4人が犠牲となった。12年春、佐々木さんらは「鎮魂の桜」と名付けた60本を化女沼畔に植えた。以後も心の復興を祈って植樹を続け、総数2750本を数えるまでになった▼「桜の会」は昨年、環境美化などの功績で環境大臣表彰と国土交通大臣表彰を受けた。最初の1600本は青年の木となり、今年は20日ごろ花の盛りを迎える。大崎市民の思いを感じに訪ねてみたい。(2017.4.16)