南米でかつて、インカ帝国などの高度なアンデス文明が花開いた。この文明はトウモロコシ栽培を基礎に成立した、と教科書はずっと教えてきた。その定説が覆されたのは十数年前。トウモロコシではなく、実はジャガイモを基に文明は築かれていた▼2004年に出た山本紀夫著『ジャガイモとインカ帝国』(東京大学出版会)に詳しい。35年におよぶフィールドワークで実証した。寒冷な気候に適したジャガイモはアンデスが原産。日本では収穫量の約8割を北海道産が占める▼昨年夏、北海道を襲った台風の影響でジャガイモが不作となり、ポテトチップスの一部商品が販売の終了や休止に追い込まれている。お気に入り商品の在庫を求めて、コンビニなどに走った人もいるという。災害の多い日本。農業のもろさの一端が垣間見える▼東日本大震災で被災した東松島市で、ポテトチップスの原料となるジャガイモが栽培されている。農事組合法人などが大手菓子メーカーと契約、遊休地で始めた。関係者は「復興の刺激になればいい」と張り切る。メーカー側からすれば危機管理の一環か▼アンデスの住民は1000メートル以上の標高差がある地に高度の違う四つのジャガイモ畑を持っていた。まさに収穫の危険分散。現代にも通じる生きる知恵であった。(2017.4.17)