「新幹線は通じたが、名物のイカが観光客にも市民にも高根の花になった」。北海道函館市の知人がぼやく。地元のスルメイカの水揚げが10年前から約8割減った。朝市の食堂がイカ料理を出せない日があったり、入荷を諦めた加工業者が野菜で商品作りを始めたりした▼庶民の味のイカが食卓から遠のいている。東北でも、山形県内のそば店が定番ゲソ天そばの値上げを迫られ、品書きから外す店も出ているという。不漁の年が続いて昨年極端な品薄になった▼「今は九州産が入る時期だが、生イカの入荷はない。入っても20パイで8千円。以前の約3倍だ」と仙台市の水産卸業者。スルメイカは東シナ海で生まれて北上し、夏から秋、東北から北海道東部が大漁場になる。異変は産卵域の低水温の影響とも言われ、いつ回復するのか分からない▼不漁は東日本大震災の被災地にも影を落とす。宮古市の水産加工会社専務鈴木良太さん(35)は地元に揚がるスルメイカを目玉に仲間と新しい味を開発し、ブログで全国に発信してきた。が、浜値は3倍に▼「お客が買えない値段の品にはできず、ヤリイカなどに材料を広げている」。復興途上の浜は昨年サンマや秋サケの不漁にも泣いたが、「知恵を絞り、これまでファンを培った宮古の味を守りたい」。(2017.4.19)