精神科医の蟻塚亮二さん(70)は、相馬市にある「メンタルクリニックなごみ」院長。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で心に傷を負った被災者を4年前から診療する。「トラウマ(心的外傷)は雪だるまのように膨らむのです」と語る▼トラウマとは衝撃的な出来事から受けた心の傷で、記憶のぶり返し、不眠、うつなどの心身症状を訴える人が多い。小さい時に家族の失跡を経験し、震災での避難を引き金に自傷に陥った人もいるそうだ▼「言葉で自らを表現しにくい子どもは心の傷を気付かれないまま、新たな傷を重ねやすい」。自分の存在や望みを失わせるような打撃が加われば、膨らんだ心の傷は破れてしまうと蟻塚さん▼仙台市折立中2年生が先月、いじめの被害を訴え自殺した問題。報道から浮かぶのは生徒の苦しみの歳月だ。「臭い」「きたない」などと校内で悪口を言われ、教師から頭をたたかれたり、口に粘着テープを貼られたりしたという。小学生の時にも教師から工作を壊され、暴言を吐かれたと遺族が明かした▼いじめの実態を調べる第三者委員会を同市教委が設ける意向だ。この3年で3人目となる市立中学生の悲劇。もはや曖昧な調査で信頼回復は難しい。生徒の心の傷の一つ一つに厳しく向き合わなくては。(2017.5.25)