白石市の特産「白石温麺(うーめん)」は孝行話が原点だという。江戸時代、胃を患った父の回復を願う息子が、油を使わず消化の良い麺を考えた。父は全快。「命の麺」である▼温麺を今に伝える老舗3代目の佐藤孝一さんは生涯、命と向き合った。元神風特攻隊昭和隊員。隊の54人中40人が命を落とす中、出撃目前で終戦。「自分だけ生き残ってしまった。運命か」。若い血は熱く、酔って料亭の池に飛び込んだ逸話も▼1992年、白石商工会議所会頭に就く。固辞したが説得された。「おまえは特攻隊。一度死んだはず。最後は白石のために尽くせ」。「やりますと即答したよ。ハッハッハ」。豪快に笑っていたのを思い出す。その後、初の名誉会頭に▼講演も多くこなした。「死んだ仲間は10代、20代が大半。戦争はむなしい」。涙声だった。2006年には、廃止された温泉施設を引き継ぐ社会福祉法人を設立。市民の長寿を後押しした。今年4月、93歳で逝った▼元市長の川井貞一さん(84)は「生き残ってしまったという贖罪(しょくざい)の思いが、常に彼を突き動かした」と語る。近年心を痛めていたのは、いじめ自殺。商議所広報のコラムに記している。「小さな悩んだ命が音もなく消える事は皆んなの力で是非(ぜひ)解決しようではありませんか」。切なる願いだったろう。(2017.5.28)