福島県猪苗代町の磐梯山麓にある「昭和の森」にアカマツ林が広がる。1970年5月、猪苗代湖を望む丘陵地で開かれた全国植樹祭で昭和天皇と香淳皇后が手植えされた苗木は、高さ10メートルを超える大木に成長した▼植えられたのは、浪江町津島地区周辺に自生する「津島マツ」。岩手県の「南部マツ」などと並ぶ銘木として知られる。藩制時代は将軍家に献上され、巨木は「帳付(ちょうづけ)松」として伐採を禁じられた。明治以降に植栽や間伐が行われ、住宅用建材として出荷された▼浪江町で製材業を営む県木材協同組合連合会の朝田宗弘会長(74)は「年輪が細かく均一。色合いもよく、引き合いが多かった」と語る。建材需要が徐々に減り、造林事業は中断。磐城森林管理署は「遺伝資源保存林」を設けるなどして保護に努めてきたが、福島第1原発事故で自生地一帯は立ち入りできない帰還困難区域となった▼全国植樹祭は来年、48年ぶりに福島県で開催される。津波被害を受けた南相馬市の海岸防災林が主会場となる。昭和天皇ゆかりの津島マツから取った種を天皇陛下がまかれる予定だ▼林野庁は今年、避難指示が解除された市町村での営林事業を7年ぶりに再開させる。植樹祭が原発事故被災地での森林再生を加速させる契機になることを願う。(2017.6.5)