「政府の答弁しどろもどろ 更(あらた)めてやり直し」「法律に暗い大臣が属僚(官僚)の答弁するところまで口を差し入れた結果がこの矛盾」。きのう成立した改正組織犯罪処罰法の審議中、金田勝年法相が演じた失態の話ではない。が、そっくりだ▼1925(大正14)年、旧帝国議会で成立した治安維持法の審議を報じた河北新報の記事。旧ソビエト連邦建国で革命波及を恐れた政府が、天皇制国家の変革を企てる「無政府主義、共産主義」「危険極まる社会運動や宣伝」を取り締まるのを目的にした▼現代風に言えばテロを企てる結社と加入者、実行の相談や宣伝、資金提供をする者を摘発し罰する。「対象の定義が曖昧」「国民の思想を支配するのは誤り」「労働組合も含まれかねない」「武断政治家に乱用されないか」。反対論も当時の審議で相次いだ▼改正組織犯罪処罰法は「テロ等準備罪」と銘打たれるが、実行行為がなくても人を取り締まれる強権という点で治安維持法以来か。国会や世論の批判も92年前と重なる▼与党の強行採決後、菅義偉官房長官は「恣意(しい)的運用はされない」と語った。が、治安維持法は、その後の権力者が戦争、国家総動員のため都合良く改正し、異を唱える者への弾圧の道具とした。「怪物」のよみがえりはご免である。(2017.6.16)