古来この石で作った布は「火浣布(かかんぷ)」(火で洗う布)と呼ばれ、燃えずに汚れだけが消えると中国で珍重された。学校の理科の実験で四角い金網を使ったのをご記憶だろうか。金網の真ん中の白い布がそれ。石綿、アスベストだ▼元は鉱物。極細繊維が取れ、腐食も劣化もしにくい。「奇跡の石」として戦前から石綿セメントなど多種多様な工業製品に利用され、とりわけ高度経済成長期、日本中の住宅、ビルの建築現場で欠かせぬ資材になった。ところが▼吸うと肺がん、中皮腫などを起こしやすいと海外で禁止が相次ぎ、被害が国内で現実になったのは12年前。各地のアスベストの工場や近隣で、中皮腫などで亡くなる人が相次いでいたことが表面化した。1年後に全面禁止になったが、問題は続く▼「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」などの調査で、過去にアスベストが建物に使われていたか、可能性のある公営住宅が全国で2万2千戸以上あると分かった。発症まで数十年という患者も多く、会は注意を呼び掛ける▼宮城県ではおととし、解体中の学校や病院の壁に大量に吹き付けられたアスベストが見つかった。使用禁止前の古い建物はこれから続々と解体時期というが、その数、280万棟。高度成長期から遅れて現れた「公害」である。(2017.6.20)