将棋の中原誠16世名人(69)=塩釜市出身=は小学生時代、塩釜や仙台で盛んにプロ棋士やセミプロと対局し腕を磨いた。9歳の時には飛車角落ちで現役八段を破ることもあった。いわば伝説の始まりである▼「将棋界は天才というバケモノの世界、タダナラヌヒトの集団だ」と書いたのは文壇の強豪、故山口瞳さん。一流棋士と対局した奮闘記『血涙十番勝負』にある。プロ棋士160人余り。その世界はまさに一人一人が伝説を持ち寄っている▼ひときわ輝きを放つ伝説が誕生した。昨年12月のデビューから無敗を続ける最年少、藤井聡太四段(14)が公式戦最多連勝記録の「28」に並んだ。30年誰も踏破できなかった高き峰。頂に立ち「非常に幸運。つきがあった」と言った。何と落ち着いた物腰であろう▼山口さんの言葉をもう一回借りる。当時23歳の中原さんを「天才の中の天才、オバケの中のオバケ、野球でいえば長嶋茂雄」と評した。藤井四段は挑戦権を得られるA級に入れば史上初の10代で名人になる可能性があり、ついにはカミサマとでも呼ばれるかもしれない▼将棋界ではくしくも現役最高齢の加藤一二三・九段(77)が引退。「神武以来の天才」から藤井四段に伝説のバトンが託された。新たなる高みへ挑み、いまだ見ぬ景色を見せてほしい。(2017.6.23)