視覚と聴覚の障害を克服し、障害者の教育・福祉の向上に尽力した米国のヘレン・ケラー(1880~1968年)は生涯に3回、日本を訪問した。初来日は80年前の1937年4月。全国を回り、歓迎を受けた▼6月に訪れた秋田市で、ケラーは切り出した。「秋田犬を連れて帰りたい」。愛犬家の彼女は、来日の2年前に死んだ「忠犬ハチ公」のことを聞き及んでいた。唐突な話に周囲が困惑する中、秋田署の巡査が、飼っていた「神風号」を贈呈した▼初めて海を渡った秋田犬は2カ月後、病死してしまう。悲嘆に暮れるケラーに、巡査は神風号の兄の「剣山号」を贈った。こちらは6年生きて、ケラーのかけがえのない伴侶となったという▼海外では「AKITA」と言えば、秋田県ではなく、もっぱら秋田犬を指すほど知名度が高い。ケラーは、海外の秋田犬人気の功労者とも言える。一方で、ハチ公の地元・大館市では飼う人が減っている。1人暮らしの高齢者が増え、大型犬を散歩させるのが大変なためとの指摘もある▼市は「秋田犬にいつでも会えるまちづくり」を掲げ、秋田犬と触れ合える観光施設の整備を計画している。全国の自治体が外国人観光客の誘致にしのぎを削る中、ケラーも愛した秋田犬は「切り札」となるかもしれない。(2017.6.25)