思いのほか情感があった。〓さくら さくら 弥生の空は…。歌って、という呼び掛けに応えた声の主は、人工知能(AI)を備えた人型ロボット。仙台市内の介護用品の展示で見掛けた▼AIと言えば将棋。佐藤天彦名人がソフトと戦い2連敗を喫した。名人の傍らにあったのはラムネ。脳のエネルギー源であるブドウ糖が主成分だ。菓子粒で集中力の低下を防ぎ、疲れ知らずのAIと戦う。生身の人間の生とは限りあるものと知る▼自動走行車による地方の交通維持、宅配の人手不足の緩和、膨大なデータを使った医療への応用。AIは将来、各分野の「名人」を上回る技術で生活を変えるだろう▼身の回りの全てをこなしてくれる家。星新一さんが1960年代のショートショート『ゆきとどいた生活』で描いた未来だ。ある朝、その家はいつも通り住人の男に朝食を出し、着替えさせて繭形の乗り物に乗せ送り出す。会社へ着いても男は動かない。医者が告げる。「死後、約十時間」▼将棋のAIは1兆もの対局から学習し強くなるという。人の死についても「パターン」を学び、尊厳ある最期へ導く手助けが可能になるだろうか。ラムネを口に含み、まずは人生の最後にAIに歌ってほしい曲を考える。被災地に生きた人なら『ふるさと』か。(2017.6.26) 

(注)〓は、歌記号「いおりてん」