陸上男子200メートルと400メートルの元日本記録保持者、原田康弘さん(62)=石巻市出身、元日本陸連強化委員長=はかねてより力説している。「(短距離は)動きとパワーがかみ合った日本流スプリントの完成が必要」▼いわば柔と剛の融合である。別の言葉に置き換えれば技術習得と筋力強化になるか。二つの要素がかみ合ったとき、男子100メートルで日本人初の9秒台は可能になる。ただ、原田さんはこうも言った。「スタート、前傾姿勢、加速まではいい。問題は加速のスピードと維持だ」と▼日本選手権(大阪)でサニブラウン・ハキーム選手(東京陸協)が100メートルを制した。10秒05。5人が10秒0台の記録を持って臨んだ決勝にしては物足りなかった人もいただろう。だが、あいにく雨が降る悪条件であり、そこは割り引いて考えたい▼新星はガーナ人の父を持つ18歳。190センチ近い大柄で身体能力は海外勢に引けを取らない。課題を挙げれば、むしろ加速するまでの「動き」か。練習拠点のオランダや秋に留学する米フロリダ大で磨きを掛けてほしい▼人類が初めて9秒台を出してから49年。日本人の新しい地平は見えそうで見えない。それでも厚い扉が開きそうな手応えはある。個性あるスプリンターたちによる切磋琢磨(せっさたくま)の先に光が差している。(2017.6.27)