薄暗闇に大きな卵が並ぶ。凶暴な女王が守り、近づく者を鋭い歯で攻撃する。米映画『エイリアン』の宇宙生物の不気味さを思い出した。神戸港に着いた中国発のコンテナから外来種ヒアリが見つかったとのニュース▼南米原産のどう猛なアリで、名の通り火のような痛さの毒針で刺し、人を死なせることもある。先月の発見時、ヒアリがコンテナを巣にし産卵していた。最近も神戸港で別の集団が見つかり駆除されたが、輸入品の荷は無数。「いつ侵入してもおかしくない」と専門家はみる▼外来種の多くは土着の生き物を駆逐して爆発的に増える。宮城県北の伊豆沼など全国の湖沼に無断放流されて増え、生態系を荒らしたブラックバスは一例。天敵不在ゆえ「暴君」になる。天敵は悪い言葉のようだが、健全な環境に必須の存在だ▼福島県飯舘村など原発事故被災地では、住民の避難中にイノシシや猿が増えて活動域を広げ、農業再生の脅威になった。村では、絶滅したオオカミが農業の守り神として古来信仰され、その理由も天敵としての力だった▼翻って、わが人間の世界。ヒアリのような外来の危機はまだ切迫とまでいかないが、内に目を向ければ、強い天敵の不在が久しい「1強」の政治。おごり、緩み、暴言、独断も常となるのが自然の理か。(2017.6.28)