世界中を釣り歩いた作家、故開高健さんが奥只見湖畔(福島県檜枝岐村など)で自然に触れた感動を書いている。「水は水の味がし、木は木であり、雨は雨であった」(エッセー集『白いページ』)。「ありのまま」の素晴らしさがじんわり伝わる▼巨大イワナ、サクラマス、ワカサギがすむ清流。空を見上げれば鳥が飛び交う。釣りとは風景との語らいであり、開高さんは地元の自然保護にも尽力した▼今週末の土曜日、東北の主要河川はアユ釣りが解禁となる。今、この釣りそのものが観光資源として注目されている。ある旅行会社は訪日外国人を取り込もうと、冬場に富士山を眺めながら山中湖でワカサギを釣るツアーを企画。長野、岐阜、静岡の各県などは釣り客の案内板に外国語表記を加えた▼先頃、来日した台湾政府観光局の局長が仙台市の講演でこう述べている。「東北に行かないと体験できないプログラムを用意することが大切」。ごもっともである。東北には自慢の山河と人情があるではないか▼昨年1年間に東北6県に宿泊した外国人は64万人余り。前年比22%増で国土交通省の過去10年の調査で最多だが、全国の伸びに比べれば「釣果」はまだまだ。開高さんが朝から晩まで奥只見を楽しんだように、心ゆくまでもっと遊んでほしい。(2017.6.29)