「時代の流れには逆らえなかった」「古里が元に戻ることはない」「せめて離村碑を建てたい」。諦念を胸に去った住民たちの言葉だ。このほど刊行された『秋田・消えゆく集落』(秋田文化出版)は、廃村への墓碑銘のよう▼著者は秋田県大潟村の農業佐藤晃之輔(こうのすけ)さん(74)。住民の離村で無人となった32の山村集落の小さな歴史を、2年かけて聞き書きした。和牛飼育や稲作で踏ん張りながら、仲間が離れたり、高齢で体調を崩したり、独りの限界が来た日が語られる▼20年前に『秋田・消えた村の記録』(無明舎、絶版)を出した。当時、集団移転などで無人となった125の集落を調べた。「経済成長の名残の時代で、移転者にまだ明るさがあった。今回は話を聞くと嫌がられた。米価低迷や高齢化で最後の望みが断たれたつらさを感じた」▼由利本荘市の山あいの祝沢(いわいさわ)に生まれ、豊かさを求め広大な大潟村に移住。28戸あった古里も、いま9戸残るだけ。田に雑草が茂り、もう知人さえいない。廃村調査は、離村者の1人としての「償い」の旅でもある▼人口減は秋田県全体でも進み、このほど初めて100万人を割った。「離村後も古里が好きだと『夏山冬里』の農業を続ける人たちがいる。去りゆくのみでない、多様な暮らしを考えられないか」(2017.7.5)