「危機」という言葉を分解すると、「危ない(ピンチ)」と「機会(チャンス)」になる。異なる意味の字が並ぶ。何か突発的な出来事により不安定な状況に陥ったとき、冷静に考えれば元に戻したり逆転したりできるのかもしれない▼日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で、ワインの関税を双方が即時撤廃する見通しになり、一方、EUは日本酒にかけている関税もなくす方向。最終合意ではないが、日本の関係者は「危」と「機」のはざまで揺れている▼花巻市の「エーデルワイン」は「(有名産地を抱える)EU産と同じ土俵で勝負しても仕方がない。むしろ日本産、岩手産を強く打ち出して対抗していきたい。そこがうちのアピール材料」。商品の徹底した差別化でこの難局に立ち向かう▼逆に日本酒メーカーは「(清酒は)海外で伸びしろがあり追い風になる」「国内に大量のワインが入ってきてアルコール市場が拡大するのではないか」とみる。結構、好機と捉える向きは多い▼グローバル経済の下、日本の酒市場はどこへ行くのか。「左党」が今後もうまい酒にありつくには、左手のノミに加えて、右手に身を削る「譲歩」のカンナも必要らしい。そこをわきまえて飲めば、豊富な種類の酒を前に危機酒ならぬ利き酒が楽しめそう。(2017.7.6)