ノンフィクション作家の柳田邦男さん(81)はかねて、他者の痛みや悲劇を知るために「二・五人称の視点」を提唱している。自分が被害者(一人称)や、その家族(二人称)だったらどうなのか考えてみよう、と。想像力である▼かつて本紙に寄稿連載した『現代の視座』によれば、「音楽に魂を揺さぶられるような理解の仕方が必要」と説いた。だが、人は歳月の流れの中で乾いた第三者(三人称)の目になりがちである。柳田さんはそこでも慈悲の心に通じる想像力を持ちたいと訴える▼1945年7月10日未明に仙台空襲があった。死者1399人、負傷者1683人。被災世帯は約1万2千戸、焼失面積約500ヘクタール。72年前の惨禍である。ビルが林立する市中心部の風景を眺めながら、火の海をイメージしてみる。映像が浮かぶまで何度も、何度も▼風化にあらがうには、やはりこの自分への問い掛けこそが大切なのであろう。記録的な雨量に見舞われた九州豪雨も、「わがこと」と捉えながら被災者に思いを寄せる「二・五人称」の視点で考えたい▼仙台空襲は市戦災復興記念館が10日まで企画展を開催。8、9日は「体験発表」「紙芝居」「すいとんの試食」などがある。見る、聴く、食べる…。平和の中、五感を使ってみて魂の揺さぶりを待つ。(2017.7.8)